4.『できる日本語』10周年記念イベントを終えて
12月12日(日)に、『できる日本語』10周年記念イベントを無事終えることができました。ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。心より感謝いたします。
簡単ですが、「記念イベント実施の報告」をさせていただきます。
*実施報告レポート『できる日本語』10周年記念イベントを終えて(嶋田)
*新城さん、坂井さんからのメッセージ・・・
*当日の資料
第1部 嶋田和子
第2部
(1)林エミ
(2)成瀬澄子
(3)グエン・ホアン・ラム
(4)虞 安寿美
『できる日本語』10周年記念イベントを終えて
当日は、200名の方にお集りいただき、第1部、第2部と登壇者による話が続きました。
第1部では、私、嶋田から「ユーザーとともに歩み続けて」と題して、10年を振り返りながら、『できる日本語』が大切にしてきたこと(していること)についてお伝えしました。
『できる日本語』が大切にしていることは、たくさんあるのですが、今回は特に以下の3点に絞りました。
*人・社会とつながること
*対話を重ねること
*成長し続けること
私は、<教科書は作って終わりではない。みんなで育て続けるもの!>だと思っています。その成長過程を振り返りながら、お話を進めました。詳しくはパワポ資料をご覧ください。ここでは、文化庁が今年10月に最終報告を出した「日本語教育の参照枠」の言語教育の3つの柱を引用したいと思います(p.6)。まさに、17、8年前になる『できる日本語』のスタート時点から大切にしてきた言語教育観が記されています。
その後、昨年までアルクにお勤めの新城さんからお話をいただきました。『できる日本語』は、まさにアルクからの声かけで始まり、アルクや凡人社とともに作り上げていった教科書です。「日本語教育に新しい風を吹かせたい」という熱い思いで、みんなで対話を重ねて作り上げていきました。
次に、凡人社の坂井さんからもお話をいただきました。この教科書は、下の図にあるように、イーストウエスト日本語学校の教師集団からなる「できる日本語教材開発プロジェクト」と、アルクと凡人社の三位一体で作られていきました。坂井さんとは、教科書づくり以上に、普及という面で一緒に活動を続けてきました。
『できる日本語初級』p.304
第2部は、「よりよい実践を目指して~それぞれの現場から~」というタイトルで、4人の方に登壇していただきました。ぜひ皆さまのパワポ資料をご覧ください。林さんと成瀬さんは、対話についてのお話です。林さんは、自己との対話、さらには他者との対話を重ね、発信をし、また対話を重ねるという努力を積み重ねていらっしゃいます。そのことについて例を挙げてて話してくださいました。成瀬さんは物との対話、つまり「教科書との対話」の楽しさ、面白さ、大切さについて、いろいろな角度から語ってくださいました。
ラムさんと虞さんは、「教師の成長」についてのお話です。ベトナムの大学で『できる日本語』を使って教えていらっしゃるラムさんは、『できる日本語』で日本語を学び始めました。すばらしい内容、プレゼン力に感動をしながら聴き入っていました。台北で教えていらっしゃる虞さんのタイトルは、ずばり「『できる日本語』で変わる私」です。最後のスライドに、こんな言葉がありました。
<このイラストは、私の目下の目標です
「鳥の目、虫の目、魚の目」>
さあ、どんなイラストでしょう。ぜひパワポ資料をご覧ください。
そして、第3部は、ブレイクアウトルームです。今回のイベントは定員200名という規模での実施でしたが、「参加者同士がつながる時間」を大切にしたいと考えました。「もっと時間が欲しかった!」「えっ、もう終わりですか?」という声がたくさん聞かれましたが、あとは、イベントが終わってからの「つながり」に期待したいと思います。
実は、スタート時点に「BORで連絡先交換が出来なかった場合は、嶋田までご連絡ください。知らせてもよいか相手の方に確認を取った上で、アドレスをお伝えします」とアナウンスしておいたのです。終了後、大勢の方からご連絡をいただき、そこでまた私も対話を楽しませていただきました。「みんながつながり、対話を楽しむ」って、すばらしいですね!
イベント終了後の「おしゃべり会」にも大勢の方が集まってくださいました。そこでは、さらに本音トーク炸裂です。主催者側にとっても、たくさんの学びがあった記念イベントでした。
さあ、今日からは次の10年に向けて新たなスタートです。2031年は、一体どんな年になっているのでしょう。大勢の皆さまとご一緒に、前を向いて歩いていきたいと思います。
皆さま、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
Today is the first day of the rest of my life.
「できる日本語教材開発・普及プロジェクト」リーダー
アクラス日本語教育研究所 代表理事
嶋田 和子
第1部「ユーザーとともに歩み続けて」の最後に、メッセージをいただきました。
「できる日本語」10 周年に寄せて 坂井訓久さん (株)凡人社取締営業部長
皆さん、こんにちは。凡人社の坂井です。今回、いろいろ「できる日本語」10周年のイベント、嶋田先生の話をはじめ、先生方に開催していただいてありがとうございます。本来は凡人社もアルクも、もう少し協力して主催者側に立たないといけないんですけども、ほんと今回は先生方のご協力というかですね、お力でこういった会ができて、僕も少しだけでも顔が出せてうれしいなと思っております。
もう「できる」10周年で、制作から考えると、たぶんもう20年近く、17、8年っていう話になると思うんですね。僕ももう最初から参加していて、もちろん新城さんがおっしゃっていた「いつまで続くかわからない会議」に毎週のように参加してました。えっと本ができてからも、嶋田先生、他の先生方とも、もう本当、札幌から、沖縄は行っていないんですけども、九州福岡までですね、何回一緒に行ったんだろうっていう、嫁よりも一緒にいる時間が長かったんじゃないかという時期もあるくらいでですね。本当に本を出して終わりということではなくて、本が出てからも嶋田先生をはじめ、先生方には本当に協力していただいたなと感じております。またこれからもコロナが収まったら、皆さまと直接会うような機会を作るということができればなと思ってます。
話が前後しちゃいますけど、「できる日本語」を作るとき、最初はアルクの方のお声がけだったんですけども、文型積み上げ一辺倒の初級教科書に一石を投じたいという思いがありましたので、今改めて「はじめに」の部分とかを読み返すと、今文化庁が言っているようなことをかなり最初から言っていたんだなというのをすごく感じました。まだ10年ですので、これから20年30年とですね、また地方巡業もやりたいと思っておりますので、ぜひぜひ直接お会いする機会を皆さまと作れればなと思っております。
また嶋田先生、澤田さん、高見さんとも、何かできればなと思いますんで、ぜひぜひお願いします。ありがとうございます。
「できる日本語」10 周年に寄せて 新城宏治さん
元(株)アルク取締役(株)エンガワ代表取締役
元株式会社アルクで昨年アルクから独立しまして、株式会社エンガワ、エンガワって、ひらく方のエンガワですけども、という会社を立ち上げました新城と申します。本日は「できる日本語」10周年、誠におめでとうございます。嶋田先生のお話をお聞きして、10年前のことをいろいろ、まさに対話を重ねていた時代、週末には、よくイーストウエストに集まったものです。いったいこの対話はいつまで続くんだろうとか思いながら、ずっと会議をやってました。
対話では、今日改めて嶋田先生の話を聞いて思ったんですけど、Aさんが言った意見とBさんが言った意見があって、Aさんの意見に一方的に従うんじゃなくて、Bさんの意見が一方的に通るんじゃなくて、そこでCという新たな価値というか意見を生み出すのが対話だと思うんですよね。これって、楽しいんですけども、時間もかかるんですよね、当然のことながら。でもやっぱりいいものができる。それから平和的ですよね、非常に。本当に対話によって必要なものができていくというふうに思っています。
この一方的じゃないというのはすごく大事だと、嶋田先生のお話を聞いて思いました。まさに先ほど文化庁が出した「3つの教育理念」がありましたけれども、その中で例えば日本人が使う日本語をゴールとしないとかですね。社会的存在として認めると、外国人だけじゃなくて日本人も当然なんですけど、それぞれがきちんと認められる。そのためには一方的に何かを押し付けるとか、一方的に従う従わせるとかではなくて、やっぱり対話をしていく中で、新たな社会を作っていくと、こういう面が大切だと思います。それを10年以上前からですね、嶋田先生、イーストウエストの先生方が実践されてきたっていうのが本当に素晴らしいことだと思います。そして、その考えは今後ますます重要になってくると思っております。
みなさんには、これまでもそうでしたが、『できる日本語』をたくさん活用いただいて、まさに「成長」ということばがありましたけども、使うっていうだけではなくて、ぜひ参画していただいて、一緒に作っていっていただきたいなと思っております。本日はどうもありがとうございました。おめでとうございました。