実践報告&現場の声

(現場の声-10)わくわくの傍らに イーストウエスト日本語学校 

イーストウエスト日本語学校
磯部 美奈

もうすぐ、私が日本語教師になって4度目の春が来ます。
それは同時に、『できる日本語』を相棒にした私の授業が4年目に突入することを意味します。

そうなんです。
私、『できる日本語』以外の教科書で日本語を教えたことがありません。
養成講座でこそ、別の教材を使っていましたが、
実際に教壇に立つようになってからは、メインテキストは『できる日本語』しか使ったことがありません。(現在所属しているイーストウエスト以外の学校でも教えたことがないので)

勤務校を探していたとき、たまたまイーストウエストの募集を見つけて、たまたま幾つかの候補の中で最初に見学して、『できる日本語』に出会ったときのわくわく感は今でも覚えています。

実際に使い始めてみてどうだったかというと、
正直、初めの半年は学校勤務になれるのに精一杯で、授業についてもテキストについても、周りの先生方からいただいたアイディアやアドバイスに倣って進めるのがやっとでした。

『できる日本語』に出会ったときのわくわく感と、クラス活動で感じる楽しさがリンクし始めたのは、担任になってクラス運営を任せてもらうようになってからだったように思います。

担任を持つようになるまでの半年で、各課のできる!や話読聞書の活動のバリエーションや、それに向けた教師の準備や情報の集め方など、周りの先生にたくさん見せていただいていたので、私もその頃には活動のネタになりそうなものを見つけるアンテナを日々張っていたり、
浮かんだアイディアを貯めておくようになっていました。

そして、クラスは私一人ではなく複数の先生で受け持っているので、それらの活動の前には担当の他の先生に(ときにはコーディネーターや他の先生にも)、内容や準備、進め方、時間数などを相談します。
私にとってこの時間が、『できる日本語』を使っていてよかったと思う時間の一つです。
相談することで、修正点を指摘してもらったりアイディアを付け加えてもらったりして、より行動目標の達成のための活動に近づけることができます。私が見えていない学生の一面を聞かされる、なんてこともあります。アイディアとアイディアのすり合わせは非常にわくわくする時間ですし、そのわくわくや期待感は授業にそのまま反映されていると思います。
週3コマの選択授業では、『できる日本語』は使いませんが、そのコース内容の話し合いでも、アイディアや情報の交換が活発に行われます。話し合いは普段からよくしているので、
初めて一緒に担当する先生方とも遠慮せずに意見を出し合えて、本当にいい環境だし、勉強にもなります。

また、私が教師をやっていて嬉しいと感じる瞬間の一つに、学生が休み時間にクラスメイトと、あるいは外出先で日本人と楽しそうに日本語で会話をしている姿を見たとき、というのがあります。これはどんな場所でどんなテキストを使っていても感じることかもしれませんが、『できる日本語』を使っているために、そのような姿を見られるチャンスをたくさん持てているような気がします。
というのも、できる!を学内行事や地域活動に結びつけて行ったとき、学生たちがその活動の中で自発的に目標設定をし、周りの人と日本語で話している姿をたくさん見てきたからです。

例えば、イーストウエストでは秋に学生たちが俳句を作るというのが恒例になっていますが、この俳句作成の時期に、初級7課をやっていたクラスを担当したときには、できる!として「句会」をしました。話読聞書の招待状は「句会のお知らせ」を書いて、教員室にいた先生方に学生たち自身で渡しに行きました。
このクラスは教室での発言は少ないおとなしめの学生が多く、来日直後の俳句作成でも皆黙々と…という感じだったので、準備が個人作業になったりしないか、本番でどのくらい話せるのか心配なところがありました。
しかし、いざ準備が始まってみると、「机と椅子はここ、○○さん、持っていってください」「壁に写真を貼ってください」など、準備段階からやり取りが活発で、句会本番でも、句に書いた情景や気持ちを楽しそうに、聞いてもらえるのを嬉しそうに話していました。
一生懸命準備したものをちゃんと見てもらいたい!そのために準備したんだ!という自信に溢れる顔が見られて、私も嬉しくなりました。

また、2月のクラス旅行と、初中級10課が同じ時期になったクラスでは、クラス旅行の計画を教室でのできる!にして、実際に行き、そのあと、『漢字たまご』10課やってみようⅣで、クラス旅行のベストショットを各自1枚選んでキャプションを書く、という活動に繋げたこともあります。
クラス旅行はみんな楽しみにしている行事ですし、普段行きたくてもいけない場所はどの学生にもあるようで、この機会に自分が行きたい場所に行くために、みんな一生懸命日本語でプレゼンをします。振り返りとしてのキャプション書きも、楽しかった日の1枚なのでたくさん書いてくれますし、漢字が苦手な学生もみんなに写真を見せたいので、できるだけ漢字を使って書こうといつもより熱心になります。

日本語習得のために、学生たちの実生活の中に日本語使用場面をいかに近づけ、組み込んでいくことができるか。その場面設定が既にされていて、学生たちが入っていきやすい世界へ教師が導きやすくなっているのも『できる日本語』の魅力だと思っています。

もちろん、毎日いろいろな活動をしていれば、途中で失敗したりうまく着地できずに終わってしまう活動も出てきます。(例を上げればキリがない…泣)
それでも今まで懲りずに新しいアイディアに挑戦してこられたのは、失敗を共有できる環境にいるからです。万全に準備を整えて、イメトレばっちりでも、結局は学生が主体なのでイメージ通りに進まず、思わぬ方向へ進むこともあります。
失敗を話すのは恥ずかしいです。でも、周りの先生方が耳を傾けて、したほうがよかった・しないほうがよかった点をはっきり指摘してくださったり、次回はこうしたらいいという具体的な案を出してくださったりします。そんな時には、自分でももう一度、「行動目標」や「できること」を確認するようにしているのですが、『できる日本語』では、巻末にそれがまとまっている上に、初級→初中級→中級と、課ごとにテーマもあるので、次のレベルのときには(同じ学生を担当するかわからないけれど)こういうふうにやってみよう!という、自分のモチベーションアップにもなっています。

日本語を教え始めて3年。
コミュニケーションとはなんぞや?という、日本語教師になるきっかけとなった問いと、日本語への興味は深まるばかりです。

そして、
『できる日本語』で教え始めて3年。
学生たちとやりたいことは増えていく一方です。

この先、どんなテキストを使うことになっても、やっぱり「学生たちと楽しいことをいっぱいしたい!わくわくしていたい!」という今の気持ち…『できる日本語』に出合って、使って感じてきた気持ち…は変わらないんだろうなあ、と将来のことを考えてみたりしつつ、4年目も更なるわくわくを目指して!精進していこうと思っています。

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