実践報告&現場の声

(現場の声-7)『できる』は何が違うのか….. 奈良先端科学技術大学院大学

<『できる』は何が違うのか…..

   イラストが多いだけじゃない、 4技能がしっかり入る>

奈良先端科学技術大学院大学 非常勤
橋本 昌子

まだまだ使い方を試行錯誤しながらの日々ですが、『できる』は何が違うのか、一度自分なりに整理して情報発信してみようと思います。まずは改めて「日本語教育はこれでいいのか」という問いかけから始まったという著者の方々の、その費やされた時間と熱意と努力に感謝致します。本当にありがとうございました。

『できる』使用に至る経緯を簡単にまとめると、4年前、奈良先端科学技術大学院大学から正規日本語クラスの開講依頼があり(詳細は省きますが、2教授法の比較のため)、新規開設だったので全て任され、嶋田先生、森先生、アルクの方々にもご相談に伺いました。大学は英語が最優先で、学生は日本語ができなくても構わないという方針。日本語クラスも他科目同様、1期に週1回8回のみで、語学教育としては言いたいことや課題山積です! これまでは大学創設以来20年近く週2回の日本語ボランティア・クラスがあり、教科書は『みんな』を使用、大学としては、これで十分だという考えだったようです。

クラス開始当初は教え方の手順を間違えないように、CD番号やイラストシートなど、一つ一つ確認しながら進めることだけで精一杯。肝心な「やってみよう」や「できる」の部分まで深く考える余裕がなく、今思えば、「もったいない」の一言です。

何が今までのクラス運営と変わったのか……

  • 音声を聞いてのリピートやシャドーイングの練習回数が増えた (音声は効果音などあり、明るく楽しい、思わず学生が吹き出すことも)
  • ペアワークが増えた
  • 学習者が自分の知ってる日本語を使って、イラストの状況になりきって言える(アニメからのセリフや関西弁も飛び出したりして、いい刺激になることも)
  • 文法はこれまで通り、しっかり入り問題なし (副教材の『文法ノート』を宿題にする)
  • 各課の終わりに「話読聞書」を読んで作文を書かせる (作文添削が楽になった)
  • 8回目の最終回 に「スピーチ大会」をし、そこで学生間の生のやり取りが生まれる。(テーマはこれまでの作文の中から選び、聞く側は必ず質問するというルール)

日本語プログラム全体としては改善すべきことが多々あり、その一つは、まだ初級クラス(N5レベルのシラバス内容)しか開講されていないため、N1、N2合格者まで入って来るということです。当初は「本当に入るの?」と確認していたのですが、N1やN2であっても会話力が弱く自信がない学生もいると判明。この点が毎期クラス運営で最も苦しむところですが、『できる』にはイラストが多く、今のところ、OPIの突き上げ技術で乗り切っています。また、最近はスピーチ大会に大学の関係者を招いたり、ビジターセッションを入れたりと、皆様の実践例を参考に徐々に教室外との繋がりを模索しているところです。

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