実践報告&現場の声

(中級)『できる日本語中級』と落語鑑賞会

イーストウエスト日本語学校では、20年前から、1月になると上級以上(年によっては中級後半以上)の学習者を対象とした落語鑑賞会を行っています。師匠の桂扇生さんは、留学生対象の落語にはすっかり馴れ、アレコレ工夫しながら毎回楽しませてくださっています。何度かホームぺージにも報告記事を書いていますが、今回は、授業とのつながりを紹介し、また、参加した学習者の声をお届けします。

落語鑑賞会で学習者は、日本語で話を聞くことの楽しさ、いつもとは違う日本語に触れる面白さ、扇子と手ぬぐいだけで演じることのすばらしさ……落語の魅力を存分に味わうことができます。さらに、落語の歴史、着物の歴史や着かたについての説明があり、日本文化への関心が深まります。

ここ数年は、学習者自身が自分の体験から小噺を作り、高座に上がって披露していますが、今年はミャンマー出身のスーシャさんがやってくれました。ちゃんと着物を着て登場したのには、びっくり! 小噺は、これまでの授業が下地となり、学習者の創造性と積極性によって、創り上げられていきます。当日、クラスのみんなが応援し、我が事のように小噺を聴いている姿に「クラスのつながり」を強く感じました。

『できる日本語中級』は、「初級→初中級→中級」と、スパイラルに展開していきますが、「人・社会とつながること」を大切にした授業展開は、中級になるとさらに広がっていきます。小噺とのつながりでは、第9課「言葉を楽しむ」と、第14課「カルチャーショック」があげられます。

 

 

 

第9課「言葉を楽しむ」の中身をちょっと見てみましょう。

【チャレンジ!】
1 <見つけた!>
詩を味わうために、その詩について書かれた感想を読んで詩について知ることができる。(新聞に載っている詩)
2 <耳でキャッチ>
語呂合わせの説明を聞いて、言葉のおもしろさを知ることができる。(コマーシャル)
3 <こんなときどうする?>
擬音語や擬態語を知って、日本語の表現のおもしろさを知ることができる。(4コマ漫画のせりふコンテスト)
4 <伝えてみよう>
日本語を使う楽しさや難しさについて、経験をもとに話すことができる。
5 <耳でキャッチ>
日常生活の中で耳にした日本語に関する質問をしたとき、その答えを聞いて理解することができる。

次に、第14課「カルチャーショック」は、以下のとおりです。

【チャレンジ!】
1 <見つけた!>
投書を読んで、自分と異なる習慣などについて理解することができる。
2 <こんなときどうする?>
客からの無理な注文に対して、それができない事情を説明し、丁寧に対応
することができる。
3 <耳でキャッチ>
異文化適応についての解説を聞き、グラフを見ながら心の変化について理解することができる。
4 <伝えてみよう>
自分の国と日本との違いについて様子や状況を少し詳しく描写することができる。

ここでは詳しく述べられませんが、こうした日々の日本語の授業での学びを通して、落語鑑賞会での小噺が生まれたのです。

では、ここで何人かの落語鑑賞会後の「学習者の声」を記載することとします。これは鑑賞会終了後、その席で急いで作成したものを、担当教師が回収したものです。

■グエン コン クアンさん(ベトナム・男性)
落語というのは「落」と「語」の二つの漢字から作られてきました。まず語は日本語、中国語、ベトナム語といった言語のことで、落とは何が落ちるかというと、おしゃべりの物語りが穴に落ちるようにおわってしまうというところから落語と言ってきました。身の回りの動物や道具などを、うまくおもしろくしゃべって笑わせてくれて、感動しました。そして、昔の時そばや数の数え方とかがいろいろ知ってよかったと思いました。ふだんのことで落語で表すと、おもしろくて聞く人の気分がすっきりすることができ、何度見ても見てもあきないとしか言いようのないほど、また見たいと思っています。
桂扇生先生今日はまごとにありがとうございました。
また先生の落語を見に行きたいと心から思っております。

■徐 嘉曼さん(中国・女性)
初めての落語、面白かったです。面白い話だけではなく、着物の着き方なども教えてくれて、よかったです。落語で使う道具の使い方やほかの普段言わない説明を教えてくれて、外国人にとってとても貴重な体験だと思います。一年前に落語を聞いたら、たぶん面白いとは思わなかったけど、今はちゃんと聞き取れるし、落語家もゆっくりしゃべってくれるし、よかったと思います。

■パン テゥヨーテイー ワナッツサボデイーさん(タイ・女性)x
初めての日本の落語を鑑賞しました。タイでも一人でおもしろい話を話すことがあります。今日は本当の日本の落語のやり方を分かりました。扇子と手ぬぐいだけ使って、おもしろい話を話してくれてありがとうございます。日本語もゆっくり話してくれたし 外国人の私たちの気持ちを分かってくれたし感謝いたします。
おもしろいことだけじゃなくて 日本の文化も勉強しました。大江戸時代の話はすごいです。

■グエン ゴック トゥアンさん(ベトナム・男性)
本当に面白かったです。
楽しい時間をくださって、ありがとうございました。
たくさん笑いました。うれしいです。
いろいろなことを教えてくれました。
あなたが食べているのを見ると、おなかがすいちゃった。
Thank you!

■艾克然木 卡得尓さん(中国・男性)
今日扇生さんの落語を聞きました。とてもおもしろかったです。ご飯を食へたところをとてもうまくまねしたとおもいます。話しの内容もわかりやすいし、おもしろかったです。ウイグルでも落語のような文化もあります。今日扇生さんの落語を聞いて ウイグルの文化の日本語やつ聞いた気がした。もっと聞きたいけれど時間が短かったと思います。扇生が落語を聞かせていただいてありがとうございます。

■方薇婷さん(台湾・女性)
日本へ来だばかりの時、日本語があまりわからなかったです。「笑点」という番組を見た時、どうして皆さんが笑うか、全然わからなかったです。今は日本語がもっと上手になって、その番組を見た時、落語家の話が全部わかって、すぐ笑ってきました。その時から落語が好きになりました。
今日、直接に落語を観ると本当に楽しかったです。桂さんは落語を話した時、表情と声はとても豊かで、内容も面白かったです。面白くて、笑いすぎて、涙が出ました。今回は本当にいい経験になりました。

■鄭乃云さん(台湾・女性)
今日落語はおもしろかったです。聞いた時、語速は早いですので、必ず集中しなければならないですね。ねずみの話、短いですが、分かりやすいので、好きです!怖いまんじゅうは簡単です。でも、怖いまんじゅうより時そばはもっと面白いと思います。そして、着物の紹介も新鮮です。今、着物を着て見たいですね。
桂扇生さんの表情は豊かです。擬音もすごく似てます。本当にすばらしいです!
スーシャさんもすばらしいです!勇気がありますね!かっこいいですね!いい経験でした!

■グエン テイ ホン アンさん(ベトナム・女性)
落語を聞いたら、一番いんしょうにのこったことはおじいさんのそばの食べ方はおもしろくてたまらないです。おじいさんはそばの食べ方を言いながら、行動で食べ方も言い換えました。楽しかったです。あとは、Suushaさんは落語をやってみました。かみがたの話はクラスでじつの話です。私こそ、Suushaさんのかみがたはとりみたいと言いました。

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