実践報告&現場の声

(現場の声-8)台中の補習班での挑戦 昭和日本語教室 山田朗一

台中 昭和日本語教室
山田 朗一

私たちの教室では、2013年12月のオープンとほぼ同時に『できる日本語』を使い始めました。この年の夏ごろ、台中の日系書店で初めて『できる日本語』を購入し、当時勤務していた補習班(民間の塾)の授業で試してみたところ、なんとなく手応えを感じたので、新しくオープンする自分の教室の教材にしてみようかな……くらいに思っていました。ただ、台湾版が出版されていない状況では現地での入手が困難で、価格も現地の一般的な教材と比べてかなり高くなってしまうことなどを考えて、実際には難しいかな……というような状況でした。

ちょうどそのころ、台北の大学の先生から嶋田先生の講演があると聞き、参加させていただきました。この講演会に参加したことで『できる日本語』の採用を完全に決心しました。嶋田先生のお話を伺いながら、「これこそ自分がやりたかった授業じゃないか!そのために自分の教室を開くんじゃないのか?」という自分の心の底からの声を聞いたような感じを受けました。

あとは、オープンまでのスケジュールと、自分自身の教材理解、人数分の教科書の確保などの問題をクリアするために、いろいろ試行錯誤していましたが、残念ながら最初の初級クラスは台湾でも入手しやすい別の教材でのスタートとなりました。しかし、1課の最初から併用しているうちに、数回目には『できる』のほうが自然にメインになり、約1か月後には完全に『できる』一本の授業になっていました。この時点でクラスみんなに正式に教材の変更を提案しました。反対は1人もなく、高価な日本語版『できる日本語』の購入にも快く応じてくれました。実際に両方の教材を使い比べて、『できる日本語』のほうを使いたいと言ってくれたのですから、こちらとしても安心して切り換えることができました。

結果はもちろん、大正解でした。具体的にどこがよくなったかと言われると困ってしまいます。なぜならほぼ全ての面で以前よりよくなったと思いますから。4技能のバランスはもちろん、塊で話すこと、フィラーを使って対話的に話すことなど…。説明や板書の時間が自然に減った分、いろいろなことに時間がかけられるようになりました。また、準備についてもわからせるための仕掛けより、引き出すための仕掛けに重点を置けるようになってきました。

台湾では、語学学習においてもまだまだ詰め込み型、知識伝授型が主流で、伝統的にテストの成績や資格を無条件に信じる傾向が強いです。そのため、いわゆる「受け身の授業」でも、それなりに真面目に取り組む人が多いとも言えます。ただ、「知っていても使えない」、「テストはできても話せない」という人の割合も他の国の学習者よりも多いのではないかと思っています。他の国に比べて、趣味や旅行のために学習する人が圧倒的に多い台湾にこそ、『できる日本語』が求められていると感じています。

また、一緒に教室を始めた台湾人の班主任(事務方の責任者)が、「私も『できる日本語』を使って教えてみたい」と言って教師に転向してくれたこともとてもうれしいことです。20年以上「受け身の授業」で教わってきた人が、自分もやってみたいと思えるところも、『できる日本語』ならではの魅力ではないでしょうか。

 

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