実践報告&現場の声

(現場の声-6)「できる日本語」がもたらした変化 千葉国際学院

千葉国際学院
中村 香理

◎使い始めた経緯
 我が校は留学生メインの日本語学校です。以前は漢字圏の学生がほとんどでしたが、最近は非漢字圏がほとんどを占めるまでになりました。2年前から「できる日本語」を使用しております。「できる日本語」以前は「みんなの日本語」を使用していました。しかし、非漢字圏の学生がなかなか話せるようにならない、定着が悪いなど様々な問題を抱えていました。そんなとき、「できる日本語」の存在を知り、「みんなの日本語」にその要素を取り入れて授業をし始めました。その時の学生の反応がとてもよく、これは本格的に使ったら様々な問題を少しでも解決できるのではという思いから、採用に至りました。

◎使い始めの混乱
 幸い、我が校は学生数も教員数もそんなに多くない学校だったため、教科書変更への反対意見はありませんでした。しかし、使い始めるにあたって様々な困難がありました。(PCや教材・テスト等の作成という物理的な問題、全教員への説明や教員間での意識の統一など)使い始めてからも、授業で上手くいかないことが多く、試行錯誤の日々が続きました。そして、嶋田先生にもたくさんお力を貸していただきまし。
 そして2年が経ち、以下のような様々な変化が日々起こっています。

◎学生の変化
 ・受身だった学生が、積極的に発言するようになった。
 ・日本語学習を通して様々な知識を得て、考え、自分の意見を持つようになった。
 ・クラスで遅れ気味の学生も、あきらめることがなくなった。周りの学生も、
  その学生を認めてフォローしたり発言を待ったりしてくれるようになった。
 ・出席率が全体的に高くなった。
 ・JLPTの聴解の点数が大幅に伸びた。(特に対策の授業はしていません。)
 ・色々な所へ行ってみる、自分でやってみる学生が増えた。

 <ほっこりするエピソード>
  あるクラスで「できる日本語初級」が終わり、「初中級」を配布した日の出来事。配られた教科書を手にし、眉間にしわを寄せた表情で表紙をじっと見て固まっている学生がいました。私が「どうしたの?」と聞いてみると、彼女は顔をあげて急に笑顔になり、「先生!わくわくします!」とキラキラした目を私に向けてくれました。「わくわくする授業をしよう!」という目標を持って日々取り組んでいた私にとって、本当に感動の一言でした。

◎教師の変化
 ・スケジュールを立てる段階、授業前など、教師間でよく相談が行われるようになった。
 ・「授業で~さんがこんなことを言っていた。」「こんなふうにやったら、上手くいった。」「こういう目的でやったんだけど、あまり上手くいかなかった。どうしたらいいだろう。」など、様々な対話が生まれた。

◎地域の変化
 今までは地域とあまりコミュニケーションがなかったので、怖がられたり迷惑がられたりで、クレーム等もけっこうありました。しかし地域の方との交流会・ビジターセッションなどを通して、地域のイベントに呼んでいただいたり、「またビジターセッションがありますか。」などと学校にわざわざ来ていただいたりということが多くなりました。登下校の学生が道端で地域の方と話している姿もよく見かけるようになりました。

 「できる日本語」を通して、本当に様々なことが変わりました。そして、教師間、学生間、教師と学生、学生と地域など、あらゆるところで「対話」が生まれ、新たな「つながり」ができました。大げさかもしれませんが、私自身の人生観も変わったように思います。
 これからも、この変化をさらに追い続けたいと思います。

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