実践報告&現場の声

(現場の声-16)学びの共同体」の形成を目指して ~目から鱗の『できる日本語』研修会を終えて~

ECC国際外語専門学校

澤田 竜人

私たちの学校で『できる日本語』を使い始めて、早くも8年以上の時間が経過しました。

その間、専任の先生そして時には非常勤の先生も交えて「あーでもない、こーでもない」と気が遠くなるほどの話し合いをしながら、何とか授業の形を作ってきました・・・作ってきたつもりでした。

 

もちろん、先生方が積極的に取り組んでくださることは、それ自体がありがたく、学校にとって貴重な時間であることは言うまでもありません。

ただ、特にここ数年、気になっていることがありました。

それは「『できる日本語』で教えるのは難しい」「授業準備に途方もない時間がかかってしまう」といったような先生方からのネガティブな声が多くなっていっていることと、「どうも思ったようには学生の日本語力が向上していないぞ」「授業を見学していても、学生が全然楽しそうではないぞ」という事実です。

要するに学生・先生に共通して見られる問題点が「楽しくない」ということであったのです。

「何とかしたい・・・」「どうすればよいのか・・・」そんな気持ちをずっと抱きながら、私自身もなかなか動き出せないでいました。

「それではいけない。目の前にいる学生にとってはその1回の授業が全てだ」という気持ちの中、ぱっと頭の中に浮かんだのが「嶋田先生に研修をしてもらおう」ということでした。(このことにたどり着くのに、めちゃくちゃ長い時間がかかってしまいました・・・)

 

そこで早速、嶋田先生に連絡を取り研修について打ち合わせをしたのですが、そのときに先生から「できる日本語のサイトにこんなものも準備してるのよ」「多くの先生からこんな実践の報告があってね」などのお話を聞き「ECCは『できる日本語』のガラパゴスになっている!」ことに気がつき、恥ずかしいやら情けないやらでした。(正直に言って、その時点では嶋田先生から「これ、知ってる?」と言われたことのほとんどが初めて見る・聞くものでした。)そしてそれが学生にとっても、先生にとっても「楽しくない」授業につながっているのだと痛感しました。そこで嶋田先生にはECCが抱えている具体的な問題を提示しつつ「研修ではまず『できる日本語はこんなに楽しいテキストなんだ』ということを伝えて欲しい」という趣旨のことをお伝えしました。

 

こうした思いを経て迎えた研修(参加者は専任教員のみ)は予想通り、参加した全員にとって「目から鱗」の内容が満載でした。

嶋田先生が研修の中で何度もおっしゃっていた「文法はとても大切だ」ということ、そして『できる日本語』には、文法を本当に意味で習得できるような仕掛けが至るところにちりばめられていること、中級の授業には授業プリントが必須であることとその理由、など「分かっているようで、本当には分かっていないこと」を分かりやすく実例を交えてお伝えいただきました。また『できる日本語』的言語学習とはどういうものか、ということが共有できていれば、個々の先生が個性を発揮してそれぞれに学生にとってよい授業を提供することができる、というこれもある意味では当たり前のことを再確認することもできました。

そんな「目から鱗」が満載の研修の中でも、特に強く印象に残ったのが、『できる日本語』の実践例や学習者がコミュニティにおいて日本語を生き生きと使用している様子を見せていただくことで分かった「つながりながら日本語を学んでいく」ことの重要性です。

 

「教室も学校もコミュニティである。そして『できる日本語』を通して外のコミュニティとつながることで、学びの共同体が形成されていく」

これまでのECCのように、自分たちの狭いコミュニティだけに閉じこもっていると、考えや行動も凝り固まっていいものが生まれなくなります。

 

今回の研修はECCが「ガラパゴス」がら脱出して、新たな広い世界を築いていく第一歩になるものだったと感じています。

 

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