実践報告&現場の声

俳句コンテストの結果発表~たくさんの対話を生んだ俳句授業

11月に実施したイーストウエスト日本語学校での選句結果のご報告です。今回は、地域の方々の声、そして、偶然にもロビーで出合うことが出来た「一席を獲得した張明哲さんとの対話」もご紹介したいと思います。

■選句結果
今年もたくさんの方が選句してくださいました。結果は以下のとおりです。

第一席  茜空 舞う葉とともに 池飾り(No.6)
(張明哲さん:中国男性)

第二席  こぼれたよ 秋のパレット 木の上に(No.1)
(金英ウンさん:韓国女性)

第三席  もみじみる 家族あいたい 日が暮れる(No.10)
(ファム・ティ・ヴァンアンさん:ベトナム女性)

■一席の張さんとの対話
イーストウエストに行った時、たまたま張さんがロビーで友達と勉強していました。そこで、ちょっとインタビューをしてみました。

嶋田:「茜空舞う葉とともに池飾り」って、
すてきな句ねえ。どんな気持ちで作ったの?
張: 俳句を作る前の日、学校でバス旅行が
あって、山に登ったり、池を見
たり、美しい色を見たりしました。その時は、遅くまで遊んだから赤い夕陽の光は、池に映って、そして赤いもみじも風といっしょに飛んだり、池の水面に浮かんでいて、とてもきれいでした。だから、すぐにこの思い出を思い出しました。
嶋田:きれいな風景だったのねえ。その時の写真がほしいんだけど、もらえる?
張: 私もすごく残念ですけど、携帯が切れてしまって、撮れませんでした。みんなで朝か
らいっぱい撮っていたから、4時で切れました。
嶋田:じゃあ、友達で誰か撮っていない?
張: 済みません。みんな携帯が切れてしまって、誰も撮っていません。本当に残念です。美
しい景色でした。芸術のようなイメージを私に与えました。まるで絵のようでした。
嶋田:俳句は面白い?
張: はい。面白いです。5.7.5の形が面白い。いろいろな言葉を合わせて作るのが楽
しいです。私は漢字が大好きで、中国の漢字と日本の漢字を比べたり、難しい漢字を組み合わせて言葉を作ったりするのが楽しいんです。漢字の美しい形が好きです。
嶋田:今、どの教科書を使っているの?
張: 青い本です(『できる日本語 中級』)。日本語学校を卒業したら、大学に入りたいです。
世界の歴史を勉強したいと思っています。

■ご近所の方々のコメント
いつもお昼やお菓子を買いに行く「むつみ堂」「ムラマツストア」「ファミリーマート」はもちろんのこと、ご近所のお茶屋さんのスタッフの方々、地域で活動するボランティアグループの方々など、たくさんの方が選句をしてくださいました。

◆選んだ句【12.あきのよる ひとりであそび たいへんよ】

年末パーティーでの授賞式

メチャクチャ楽しく拝見させていただきました!! 「こういうの得意なんダー」ってコ
から、「やだよーこんな課題ムリムリムリ……」っていってるコまで色んな顔が思い浮かび
ました。自分が小学生の時の国語の授業中みたいだなあと。

年末パーティーでの授賞式
ただ、本人のヤル気のアル無しと、作品のおもしろさがかならずしも一致しないトコロが、
俳句のイー所だと思います。グっとくるなかなかお目にかかれない素敵なフレーズに丸してしまいました。
秋(と、そこにまつわるサミシサ)が課題だったのですかね。
風景が一番えがきづらい、という意味では俳句としてNGなのでしょうが、逆にいちばん想像をかきたてられたので、この句にしました。

◆選んだ句【1.こぼれたよ 秋のパレット 木の上に】

張さん、クラスのみんなと

張さん、クラスのみんなと
どの句も一生懸命作った様子がわかります。
秋=さみしい=家族を想う気持ちは国を超えて共通なのですね。
1は、情景があざやかに目に浮かぶので決めました。

◆選んだ句【15.美しい 黄赤茶まじる 山景色】
俳句の表現技法の一つ、「体言止め」が使われている点が素晴らしいです。読み手にも、紅
葉の美しさが伝わってきます。

♪   ♪   ♪

こんな温かい気持ちで、留学生達を包んでくださっている地域の方々に改めて感謝の気持
ちでいっぱいになりました。近くのパン屋さんやお弁当屋さんでは、いつも休み時間に買い
に来る学習者に対して、「ほら、もう時間になるから、早く教室に戻ったほうがいいよ。授
業に遅れたら大変だから」とお店の方が注意をしてくださったり、学内年末パーティーには
景品のお皿を山のように届けてくださったり……。年末パーティーと言えば、毎年「なでし
こ会」の方々がいろいろなお料理を作って、ご一緒に参加してくださっています。本当に地
域に根差した日本語学校は、楽しい学び舎です。

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