実践報告&現場の声

(中級)『できる日本語』をきっかけに新たな一歩を踏み出す

『できる日本語』をきっかけに新たな一歩を踏み出す
澤田 尚美 (台湾)中国文化大学推廣部

私は今、台北にある中国文化大学のコミュニティカレッジで社会人学習者に日本語を教えています。私の教室でも、現場の声12でシンガポールの越川先生が紹介されていた教室と同じような方が、『できる日本語』を使って、日本語を勉強しています。

今日は私が担当している週2回の午前クラスでのことを紹介させてください。このクラスに来ている方々は主婦の方がほとんどです。皆さん旅行が大好きで、日本はもちろん、様々なところに行っている旅の達人です。『できる日本語 中級』の中でも、10課「日本を旅する」はとても関心が高かったです。それ以外の課でも、この旅の達人たちにとって授業の内容が役立つ情報となって、それを生かせてもらえたらいいなと思いながら、日々の授業に取り組んでいます。
18課4伝えてみようでは、東京の奥多摩の話が紹介されています。これを紹介するとき、私は下記の写真を学生さんに見てもらいました。

 この写真を見たとき、誰も「東京」だとは思わなかったようで、私が「東京です」と紹介すると、教室から「えー!」という驚きの声があがりました。そんな導入から入っていった「伝えてみよう」は少々インパクト(!?)が強かったようです。
この授業が終わってから、しばらくたったある日、ニコルさんという学生さんと次のようなやり取りがありました。
「先生、来週、私は日本へ行くので授業を休みます」
「はい、気をつけていってらっしゃい」
その1週間後、私はLINEで彼女からメッセージを受け取りました。

先週、奥多摩に行きました。澤乃井の酒蔵見学も参加しました。先生のおかげで楽しかった。木曜日湧き水を使って日本酒を持って行く、みんな一合ずつ試飲できます。

このメッセージを受け取ったとき、びっくりしました。というのは彼女は遊びで日本へ行ったのではなく、自分の仕事の仕入れで日本へ行くと聞いていたからです。
その週の授業に行くと、ニコルさんはたくさんの写真を見せながら、クラスメイトに奥多摩の話を紹介してくれました。クラスメイトは新緑がきれいな奥多摩の写真を見ながら、いろいろ質問をしていました。旅の達人たちの中では、奥多摩が早速、次の旅行先として候補になったようでした。ニコルさんが「今回、教科書で知った奥多摩へぜひ行きたいと思っていた」と言ってくれて、私はじーんと感動してしまいました。それに加えて、もう一つ嬉しかったのは、澤乃井のサイトから酒蔵見学を申し込むとき、1課の1「見つけた」で「イベントのお知らせでよく見ることば」などが役に立ったと言ってくれたことでした。
紹介が終わると、ニコルさんは保冷剤を入れたバックの中から、ほどよく冷えた日本酒を出し、クラスメイトに振る舞ってくれました。「日本酒は体にいいそうです」彼女が試飲した中でいいと思った日本酒「蒼天」というお酒をいただきました。香りがよくて、本当においしかったです。



この授業のあと、私はこの話をそのままにしておくのはもったいないと思い、ニコルさんに今回の旅行の感想を書いてもらうお願いのメッセージを送りました。お仕事や家のこともあるので、無理はしないでくださいねとも書き加えました。すると

はい、わかりました。私に任せてください!

と頼もしいお返事が来ました。そして、2週間後…

先生、お待たせしました。奥多摩旅の感想やっと書きました。間違いのところを教えていただけませんか。どうぞよろしくお願いいたします。

のメッセージとともに、WORDファイルが届きました。実は、私はお願いしたとき、どのくらいの分量かも言わずにお願いをしてしまいました。自分の中で、A4ファイル1枚くらいと勝手に思っていました。ファイルを開けてみると、なんと!20枚にも渡る旅行記がそこに書かれていました。奥多摩の様子が細かく書かれていて、また、写真のキャプションも付いていました。思わず涙が出そうになりました。私が気軽にお願いしたことを、こんなに丁寧に書いてくれるなんて‥‥

彼女にお礼のメッセージを送ったところ、

よかった。本当にうれしかった。先生のおかげで初めて日本語でこんな長い作文を書きました。この機会なので私はもっと成長することができる。ちゃんと本当の感想を伝えたいと思いますから、ついたくさん書きました。haha

「伝えたい」という気持ち、これこそ『できる日本語』が大切にしているコンセプトです。それを体現してくれたということは本当に著者冥利につきます。このニコルさんの思いをぜひ皆さんに受け止めていただきたく、こちらに作品を紹介いたします(本人の許可ももらっています)。どうぞ新緑の奥多摩の空気をお楽しみください。

※ニコルさんの作品は、「原文のまま」であることを書き添えておきます。

⇓⇓⇓ ニコルさんの旅行記 ⇓⇓⇓

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