実践報告&現場の声

(現場の声-17)サステナブルな「学びの共同体」

東禾国際外語学校

滝沢佳代子

私たちの学校は台湾にありますが、今回は嶋田先生に来ていただく対面での学内研修はあきらめざるを得ず、オンラインでの研修を行いました。約20名の教師が教室に集まり、嶋田先生は画面を通して教師たちに教えてくださり、また一人一人と対話してくださいました。オンラインに慣れている嶋田先生も私たちもこの形式は初めての試みで、嶋田先生に準備期間も含め大変手間をかけていただいたおかげで、今現在、今後の展望が開けたと感じています。

私の学校は2018年3月から『できる日本語』に切り替え、当初はそれ以前に開講した『みんなの日本語』使用のクラスと混在状態でしたが、1年ほど前から完全に『できる日本語』使用のクラスに切り替わりました。今回の研修は『できる日本語』の良さはわかっているつもりでいても、それが学習者の“できる”までに繋がっていないのではないか?という問題意識から始まった研修でした。

教師たちが一番変わったことは、研修中や研修後に日頃の授業を見つめ直し、他の先生方と話し合うことで目の前の学生とどのように向き合ったらいいかということを考えて授業に臨むようになったことだと思います。ある教師が研修中に嶋田先生著書の『目指せ、日本語教師力アップ!』(ひつじ書房)にある「日本語教師に求められる資質・能力」で教師は「テクニカル・スキル」が中心になりがちだが、物の見方「コンセプチュアル・スキル」や学生と良い関係性を作り上げる「ヒューマン・スキル」も忘れてはならないという内容を引用して、そこが足りない教師がいるのではという感想を述べました。

その後、研修後に先生方から研修で学んだこと、その後の授業で変えたことなどをメールで送ってもらい、研修内容やメール内容のポイントを「授業において大切なこと」と題してまとめた物(以下に記します)を今日の会議で再確認し、今後、『学びの共同体』を持続可能にするために、どのように学び合えば3つのスキルを向上させられるかを話し合いました。

授業において大切なこと

【ヒューマン・スキル】
・教科書やPPT教材に頼りきりになるのではなく、目の前の学生と向き合い、“対話(教師と学生または学生同士)”を大切にする。
・“教える”よりも“引き出す”ことの大切さ。それには学生を信じること。

【コンセプチュアル・スキル】
・行動目標に沿って“何のためにそれをするのか”を考えて授業を進める。
・行動目標や学習内容を踏まえた上での有効な時間配分を考える。

【テクニカル・スキル】
・『話読聞書』の扱い方:「自分のこと」「意見」「経験など」を相手に話し、「固まりで話す」ことが大きな目的で、副次的に書いたり読んだりすることもできる。
・文字ばかりに頼らない練習方法やただの代入ドリルにならないような練習方法の実施。
・『やってみよう』のCDは聴解問題ではなく、CDのスクリプトのように会話するにはどのように話せばいいかという次のステップに移る前の刷り込みのためのものである。

今、この原稿を書いている間もいくつかの教室から学生たちが楽しく話す声が聞こえ、自分のことを話し合う姿が見えます。先生たちも一人で考えるばかりでなく仲間と話し合えば、この3つのスキルが向上し続けると信じています。そして、『学びの共同体』が持続可能になるために、自然と話し合いたくなるように仕掛けるのが私の仕事だと思っています。

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