実践報告&現場の声

(現場の声-13)やってよかったぁー! ―『できる日本語』初心者勉強会 in Kobe―

森川結花

2019年7月27日(土)10:00~12:00、『できる日本語』教師の会WJ第2回目の集会として、『できる日本語』初心者勉強会を甲南大学岡本キャンパスにて開催しました。ここに、その時の模様をレポートさせていただきます。

●日本語教師は“ぽつんと一軒家”ではやってけない
まず最初に、『できる日本語』教師の会WJ(WJはWest Japanの意味です)の自己紹介からさせていただきますね。『でき日』WJは、今年2019年3月からFacebookグループとしてスタートした仲間たちのネットワークです。『でき日』を実際に使っている教師もいれば、まだ使ってないけどすごく興味があるので…という教師もいます。そもそも私がこのグループページを作ったのは、私自身が隣近所にちょっとものが聞ける仲間が欲しいと思ったからです。甲南大学の日本語プログラムで『でき日』を採用したのは3年前のこと。当時私の親しい知り合いの中で、「あ、うちもメインで使ってるよ」なんて気軽に答えてくれる人はおらず、その時はぽつーん…と孤独な気持ちでいっぱいでした。孤独に頑張るということは他でも経験していますが、あんまり精神衛生上良くないし、仕事の効率も悪いです。仲間を作っていかなきゃ…と切実に思いました。それで、蛮勇奮って日本語教育学会の関西支部集会の交流ひろばに出展http://www.nkg.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/shibuhokoku_2018_6.pdf、それと同時にFacebookページも立ち上げました。嶋田先生に後押ししていただいたこともあって、仲間は順調に数が増え、2019年8月13日現在で49人のメンバーが集まりました。
さぁ、バーチャルの次はいよいよリアルにつながらなければ。ちょうどうちで新規採用の教師に『でき日』の教え方研修も必要だったので、初心者コースの勉強会を開くことにしました。定員20人で凡人社大阪支所のメーリングリストで募集をしたところ、24時間以内に定員に達しました。この反響にはこちらもびっくりでしたが、それだけ関心が高いということですよね。応募者の多くは『でき日』未経験者でした。遠くは広島からの応募もあり、これは仇やおろそかな内容にはできないと、こちらにも緊張感が走りました。

●雨にも負けず風にも負けず
そんなこんなでいよいよ明日が当日、という時になって、なんと台風6号が日本へ向かってきました。時間帯も進み方も微妙に影響を受けそうな感じ……で、当日の朝、神戸には警報こそ出ていなかったものの、台風の雲がかかって曇天、これからどうなるかな?という雰囲気でしたが、決行して出席できる人だけででもやろうと。それで、出席予定者の皆さんにお知らせを回したところ、結局欠席者は2名のみで、事務局まで合わせて総勢21名で賑やかな集会になりました。これこそ「雨にも負けず風にも負けず」ですね(笑)。悪天候にもかかわらず出てきてくださった皆さんは、明るくてパワフルな日本語教師たちでした。

●班長さんが大活躍
さて、当日の勉強会の内容ですが、それより以前に浜松日本語学院で行われた嶋田先生の特別講義をダイジェスト版で関西の皆さんにお伝えしようと思い、形式も嶋田先生のやり方にならい、ワークショップ方式ですることにしました。全体を4人一組の班に分け、『でき日』使用経験者に班長さんになっていただきました。『でき日』の目標や特徴を確認し、他の教科書とどこが違うか比較、それから『でき日』は初めてという方に、「分からないなりに、ちょっとやってみて」とチャレンジしていただき、その後、班長さんに経験者として模範演技をしていただきました。私は全体を見ていたのですが、どの班も班長さんがうまい!さすがは経験者です。本当に班長さんにお任せして正解だったと思います。それと、4人一組の顔を突き合わせて話し合える距離感だと、あっという間に垣根が取り払われて、話がわーわー盛り上がっていました。あー、みんな、話したいことがいっぱいあったんだーとしみじみ実感しました。“ぽつんと”感にさいなまれていたのは私だけじゃなかったのかもですね。今はソーシャルメディアを使えば誰とでも何でも話し合える時代ですが、それでも我とわが身で時空間を共有する一瞬には代えがたいものがあって、こういうところからまたエネルギーが湧いてくると思います。日本語教師は基本的に楽しい仕事ですが、常に異文化にさらされているというストレスの高い仕事でもあります。教室の中では教師がたった一人の異文化です。若い学習者たちの底知れないパワーに対峙するには私たち自身も元気いっぱいでいる必要があります。仲間がいるからこそ心強く、自分たちも元気いっぱいでいられる、そういう会に『できる日本語』教師の会WJを成長させていきたいなと思います。

●参加した皆さんからの声
最後に、勉強会に参加してくださった皆さんからの声をご紹介します。これが西日本の雨にも風にも負けない根性の据わった教師たちの声です。

・(Kさん)テキストを見て、「どうやって使うのー?」と?マークばかりでしたが、昨日の講習会でほんのり輪郭が見えてきた気がしています。またこういった機会があれば、ぜひ参加させていただきたいと思います。よろしくお願いします☆彡

・(Fさん)非常にためになる勉強会でした。常に基本に忠実に、ワクワクしながらみんなで作る共同体を目指します。既存のテキストと比較をしてくださったのもありがたかったです。
それから、『できる日本語』は学習科学に即した進め方だと思いました。問題を発見して解決する能力が身につきますね。

・(Sさん)今回はまだこの教科書を使ったことのない方々への紹介だったと思います。今後、実際に導入するにあたって「みんなの日本語」等文法シラバス中心のテキストに慣れている教師の反応や導入してからの変化、そのほかの課題など、経験された先生方のお話がいただければと思います。

・(Dさん)私ごとですが、日本語教師の経験もなく、いきなり『できる』テキストをいただきました。自分でオリジナルの、、と言われて、戸惑うことばかりです。「みんな」との比較や、活用されている先生のお話など聞かせていただくことができました。嬉しい勉強会でした。

・(Tさん)絵のどの部分に注目してもらい、どのような質問をして発話を促すのか、を他の先生方がされているのかを見ることができて、気づきの多い勉強会でした。学習者に合わせてカスタマイズしてもよい部分や、どのようにカスタマイズしてもいいかを知ることができて、どのように授業で使っていくのかが具体的にイメージできたのもよかったです。カスタマイズの方法など、今後も他の先生方とアイディアをシェアしていけたらと思います。


『できる日本語』教師の会WJ マスコットキャラクターの「でき太」にゃん。
幻のオスの三毛猫3歳です。かしこそうでしょ?
日本語教師兼イラストレーターの西村まどかさんの作品です。

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