実践報告&現場の声

漢字ワークショップ報告:学習者が覚え方を見つける教師の問いかけ

2025年9月にイーストウエスト日本語学校の講師会が開かれ、そこで漢字のワークショップが行われました。

このワークショップを受けて、改めて漢字指導のおもしろさと奥深さを感じたので、報告&共有をしたいと思います。

 

講師会では毎回ワークショップが行われており、多角的に日本語教育のことや指導について振り返るきっかけになっています。

今回は今年の7月に『漢字たまご中級2』が出版されたこともあり、漢字のワークショップが行われました。

 

最初に『漢字たまご中級1・2』の概要説明や『漢字たまご初級・初中級』との違いについて説明がありました。

 

次に「靴、帽、財、布、毛、具、照、婦、壁、眼鏡、化粧、紳士服」の漢字が提示され、「これらの漢字の接触場面はどこか」という質問が私たちに投げかけられました。

みなさんはどんな接触場面だと思いますか。

 

これはショッピングモールやデパートのフロアマップです。『漢字たまご中級2』11課で学習する漢字です。

 

そして、「これらの漢字を学習者が効果的に覚えられるように、教師としてどのような問いかけをするか」グループで考えました。

このワークのポイントは「学習者がどのように覚えると良いか」ではなく、授業で「学習者が効果的に覚えられるように、教師がどのような問いかけをするか」でした。

数分間グループで話した後、全体で共有が行われました。印象的だったものをいくつか紹介します。

「壁」

・「」は『漢字たまご中級1』5課「避難」でパーツは既習。

→「見たことがあるパーツがありますか」「知っているパーツがありますか」と問いかけたら出てきそう。

・「避」難するときは「壁」に沿って逃げるなどのストーリもできそう。→「どうやって覚えますか」と聞く

・「壁」は土でできている、「」の部分は窓に見える。→「この漢字にはどんなパーツがありますか」「何に見えますか」と聞くと良いかも。

・窓に見えるというのは、せっかく教室内にいるので「教室の壁には何がありますか」など身の回りの物を素材にしてアイデアを引き出すこともできるのではないかという話もありました。

他にも、学習者のアイデアを大切に拾って、発話を紡いでいくことが重要だという話もありました。

 

◆「照」

・「紹」を『漢字たまご中級1』1課で学習しているから音は推測できそう。→「知っているパーツがありますか」「何と読みますか/音は何ですか」と聞く。

・「灬」は照明の光のイメージイラストが描けそう。→「この部首はどういう意味ですか」、「何に見えますか

 

◆「靴」

・「「革」が「靴」に変わる(変化する)」とできる。「化」は『漢字たまご中級1』1課で既習なので、復習になる。→「「化」はどういう意味がありますか」と聞くと良い。

復習になるパーツも教師が言ってしまうのではなく、学習者に発話してもらうことが大切だという話が出ました。

 

ワークショップは短い時間でしたが、様々なアイデア交換、意見交換ができました。

教師として学習者がどう覚えると良いか準備することも必要だと思います。しかし、より重要なのは「学習者自身が覚え方を考えられる問いかけを考えること」だということを再確認しました。

私自身、学習者の覚え方を引き出すことを意識しているつもりでしたが、ワークを体験して、問いかけ方が単調になっていたなと振り返りました。

漢字の特徴や学習者の発話によって、問いかけ方のバリエーションが多くあるということに気づくことができました。

これから新学期が始まります。今学期は学習者が話したくなる、アイデアが沸く多様な問いかけを工夫していきたいと思います。                                          

                           (イーストウエスト日本語学校 伊瀬知)

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